( 2017.02.20 )



  



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「グローバル社会でのより良い人材育成のフレームワークづくりと、新しい時代の大学改革につなげていただきたい」
 1月23日、東京・新宿の早稲田大学大隈記念講堂。国際シンポジウム 「グローバル社会における大学の役割」 が開催された会場は大学関係者ら総勢約250人で埋まり、文部科学省高等教育局職員の冒頭の発言に熱がこもった。

 このシンポジウムで早大と文科省を結びつけたのは、文科省のスーパーグローバル大学創成支援事業だ。 早大は平成26年9月、世界大学ランキングのトップ100を目指す力のある大学を重点支援する同事業( タイプA )に東大など12校とともに選ばれ、文科省から最長10年間、毎年億単位の補助金が注入される。

 日本のグローバル化を牽引けんいんするタイプBに選ばれた24校にも手厚い支援が行われ、関係者の間では 「特定大学の生き残りに向けた事実上のお墨付きではないか」 といった見方もささやかれている。

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 大学のブランド力向上にも好影響を及ぼす事業に選ばれた早大。 だが、文科省から天下りした役人の存在が暗い影を落とす。

 内閣府の再就職等監視委員会から、職員による斡旋あっせんを規制する改正国家公務員法違反に認定された前高等教育局長の吉田大輔が、その人だ。

 文科省の天下り問題を集中審議した2月7日の衆院予算委員会。 野党議員がこの事業と吉田との関係を問いただし、事業の公募( 26年4月 )と採択時の高等教育局長が吉田だったと文科省幹部が明かした際、委員会室に軽いどよめきが起きた。

 事業の発端は25年5月、早大総長の鎌田薫が座長を務める政府の教育再生実行会議がまとめた提案に、スーパーグローバル大学構想が盛り込まれたことだった。 早大が公募時に提出した構想調書には、吉田が再就職後に所属した早大大学総合研究センターが、この事業に関係する相関図も添付されていた。

 「どこからどうみても癒着だ」。 野党議員から痛烈に批判された文科相の松野博一は、第三者が事業採択を厳正に審査し、再就職とも関係ないと強調する一方、 「公平さが保たれたか( 調査で )解明したい」 と引き取った。

 吉田は早大で著作権制度の調査研究を行う傍ら、文科省事業について早大に助言する役割も担っていた。 問題発覚後に辞職したが、事業選定をめぐる経緯には不透明さが残ったままだ。

 早大は取材に 「( 吉田は )大学でスーパーグローバル大学創成支援事業に関与していない」 と回答している。

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 「不透明な関係」 を否定する文部科学省と早稲田大学。 だが、補助金と天下りとの関係には厳しい視線が注がれている。

 一部の大学関係者の間で話題となったのが、平成26年に行われた茨城大学での学長選とその後の展開だ。

 文科省OBと副学長による戦いは 「客観的な立場で大学運営ができる外部人材か、内部の人間関係に精通した生え抜きか」 ( 同大関係者 )という構図となったが、投票の結果、後者に軍配が上がった。

 その後、スーパーグローバル大学創成支援事業の採択で明暗を分けた。 茨城大は不採択となり、落選したOBが再就職した名古屋大が採択されたのだ。

 茨城大の申請内容は 「合格にはほど遠かった」 ( 同大関係者 )とされるが、それでも文科省幹部は 「補助金とOBの再就職との関係には今後、一層注意を払う必要がある」 と険しい表情を浮かべる。

 学生数などに基づいて支出される運営費交付金や私学助成が頭打ちになる中で、各大学が獲得に血道を上げるのが、文科省の審査で配分が決まるスーパーグローバル大学創成支援事業などの競争的資金だ。

 「天下りを1人受け入れて、補助金が獲得できれば費用対効果はいい。 特に経営が厳しい大学は文科省依存を強めている」。 私大関係者は、自主独立を何より尊重するはずの大学が、すでに文科省の軍門に下っている状況をほのめかした。


 

「来たくないのを呼んできた。 大学研究センターの改革に着手してもらっている」
 内閣府の再就職等監視委員会が、文部科学省の組織的天下り斡旋問題を公表した5日後の1月25日。 一般社団法人 「国立大学協会」 ( 東京 )の通常総会後に開かれた記者会見で、出席した筑波大学長の永田恭介は記者から文科省OBを教授として受け入れた理由を問われ、大学が求めた人材だったと強調した。

 文科省OBの教授は元高等教育局長。 平成24年7月末に国立教育政策研究所長を退職後、同年9月に筑波大に再就職した。 国際化時代に必要な大学改革の在り方などに詳しく、世界標準の大学を目指す筑波大に迎えられた。
「文科省が目指す大学改革の方向性を熟知しており、筑波大以外にもいろんな大学が狙っていたのではないか」
 文科省幹部はこのOBが引く手あまただったことを明かし、文科省OBを求める大学側の需要の大きさを改めて示した。

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 設置準備室室長、大学設置事務室事務局長 …。 国家公務員の再就職状況を公表している内閣人事局のホームページには、文科省OBの天下り先として大学や学部の新設準備にあたるポストも目立つ。

 実際、文科省OBを大学幹部として迎えたことがある私大関係者は 「用心棒がいないと大学経営なんてやっていけない」 と話し、煩雑な大学関連の事務手続きには文科省OBの存在が欠かせないと断言する。

 一連の問題で脱法システムの仲介役となった人事課OBの嶋貫和男の再就職も、大学設置の時期と重なった。

 嶋貫は退職後の22年1月、学校法人滋慶学園( 東京 )の特別顧問に再就職した。 そのタイミングはグループの別法人が大学院大学の設置を計画、21年3月に新設申請して取り下げた後だった。 嶋貫の再就職後の22年3月に再び新設を申請、審議会の審査を経て、同年10月に文科省から設置を認可された。

 この大学の設置経緯をめぐっては、2月7日の衆院予算委員会で取り上げられた。 参考人として出席した嶋貫は 「一般的に大学設置で大事な点について、勉強のつもりで( 文科省に )尋ねたことはある」 と述べたものの、積極的な働きかけは否定。 グループ側も 「嶋貫氏が( 設置申請に )関与したことは一切確認されていない」 とのコメントを出した。

 大学の新設と文科省OBの天下りの関係について、文科相の松野博一は 「国民の疑念に答えられるように引き続き徹底した調査を進めていきたい」 と答弁した。

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   文科省と大学間での人材の需給関係は現職職員にも及ぶ。

 「( 独立した )国立大学法人で文科省職員が勤務することは、国立大学の自主性を失わせるなど弊害がある」。 民進党議員が2月1日に提出した質問主意書に対し、答弁書は 「大学で養った現場感覚を文科省での業務に反映させることができる」 とメリットも強調。 その上で、今年1月1日現在、国立大学からの要請に基づき職員276人が現役出向していると明記している。 文科省全職員の1割近くに相当する人数だ。

 一方、大学への出向経験がある職員は大学側の本音をこう明かす。 「一番欲しいのは、補助金獲得や許認可手続きを有利に展開するための情報だ」

 文科省人事に事実上組み込まれる大学への現役出向の慣行。 双方にメリットがある限り現役出向はなくならず、密接な相互依存関係は天下りの土壌にもつながる。




「こんなに優遇されていたのか …」

衆院予算委員会で自民党の牧原秀樹氏の質問に答える文科省
人事課OBの嶋貫和男氏
 文部科学省の組織的天下り斡旋問題で、文科省が2月6日に発表した斡旋仲介役の人事課OB、嶋貫和男に関する内部資料に目を通した職員は言葉を失った。

 平成25年9月作成の文科省人事課の内部文書には、ノンキャリア官僚にすぎない嶋貫への破格の待遇条件が記されていたからだ。
 《 保険会社顧問に就任 出勤は月2日程度 年間報酬1千万円 》
 《 秘書給与( 年400万円程度 )や執務室賃料( 月10万円程度 )を支援 》
 実際、嶋貫はその後、保険会社顧問に同じ条件で再就職し、文科省OBが複数天下る文教協会や教職員生涯福祉財団が家賃や秘書給与を負担した。 保険会社顧問はキャリア官僚の局長級歴任者のポストとされ、元事務次官も了承していた。

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 この文書が作成されたきっかけは、当時の教職員生涯福祉財団理事長が、同財団審議役だった嶋貫による斡旋業務について、財団の業務と同一視されることに難色を示したことだった。

 嶋貫が退職後の21年7月から同財団の一室などで行ってきた斡旋が困難となれば、職員の斡旋を規制した改正国家公務員法( 20年施行 )を回避する道具を失いかねない ──。 文科省人事課内に広がったのはそんな危機感だった。

 「人事課在職中から顔が広く能力も高かった嶋貫は斡旋業務では余人をもって替え難い存在。 人事課は斡旋継続に向けなりふり構っていられなかった」。 文科省幹部は当時の人事課職員らの焦りをこう代弁した。

 では、文科省が破格の条件を提示してまで、嶋貫を仲介役とした脱法システムを死守しようとした理由はどこにあったのか。
「外部から声がかからない、だぶついた幹部たちを大学などのポストにはめ込み、省内人事の停滞を防ぐ目的もあった」
 別の幹部は、文科省の人事サイクルに組み込まれた天下りの斡旋が “必要悪” だったとの認識をほのめかした。 そこには大学との密接な関係の中で長年守ってきた指定席を維持し続ける思惑も透ける。

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 職員の斡旋を規制した改正国家公務員法の施行後も、OBを仲介させるなどして違法な天下りの斡旋を組織ぐるみで繰り返してきた文科省。 3月末までに全容を解明して最終報告書をまとめ、関わった職員を処分するとともに再発防止策を打ち出す方針だが、その青写真はまだ見えない。

 改正国家公務員法の施行に合わせ、各省の斡旋を一元化した内閣府の 「官民人材交流センター」 も存在感が薄い。当初は官民癒着や不正な天下りを防ぐ目的で設けられたが、21年に天下り斡旋の全廃を掲げた民主党( 当時 )政権が組織の改廃を除き、センターで直接斡旋はしないとの方針を表明。 25年から各省の早期退職制度に応じた人に限定し、民間企業に斡旋業務を委託している。

 27年度までにセンターを利用したのは100人にとどまり、うち再就職したのは48人、管理職は6人にすぎない。

 同センターの制度設計に携わった神戸学院大学教授の中野雅至は 「センターの現状は非常に中途半端で、政治家も( 適正な再就職の実現を )やりきる決断がない」 と指摘する。 再就職の適正化には役所が65歳まで職員を雇い続けることが重要だと訴える一方で、こうも強調した。
努力なしに最後まで厚遇ポストの面倒をみてほしいというのは、官僚の傲慢さの表れ。 今は好待遇の再就職先を自分で見つける時代だ」 ( 敬称略 )





( 2017.01.20 )



 文部科学省が天下りを斡旋あっせんした国家公務員法違反が発覚した。

 元局長が自らの監督下にあった私立大の教授に就く。 誰もが首をひねる再就職が組織的に行われていたとすれば、天下り規制強化の流れに逆行するものだ。 官僚のモラルの欠如にあきれる。

 教育をつかさどる官庁として恥を知るべきだ。 背景を含めてさらに調査し、再発防止を図ってもらいたい。

 内閣府の再就職等監視委員会が調査した。 監視委は規制強化の一環で平成20年に設置された。 違反行為を調べ、懲戒処分を勧告する権限がある。 発覚後、直ちに文科省事務次官の引責に発展したのは、深刻な事態といえる。

 判明しているのは27年、当時の高等教育局長が退任2ヵ月後、早稲田大の教授に再就職した問題だ。 文科省の人事課が斡旋に関与した疑いがある。

 国家公務員法は、利害関係がある民間企業や団体への天下りを規制している。 自分の求職活動のほか、省庁OBの職歴情報を企業側に提供する斡旋行為などが禁止されている。

 まさか、文科省と私大は利害関係にはないと思ってはいまい。 国から多額の助成金が支払われている。 早稲田大への年間経常費補助は90億円規模だ。 文科省は学部新増設などの許認可権限を握っている。 緊密すぎる関係から 「人事異動」 の感覚だったのか。

 官僚組織は、同期が次官に就くと、定年前の局長らが関連財団などに天下る慣行が続き、批判をあびてきた。 そこに厳しい目が注がれ、天下り先は減ると思われた。 たくさんある大学なら目立たないとでも考えたか。 「役人天国」 に使われては大学の名も泣く。

 文科省以外の官僚出身者を含め、大学の職に就く例は少なくない。 個人の専門性を生かすにも透明性は欠かせない。

 第 1次安倍晋三内閣時代、官製談合などを排する天下り規制強化とともに、背景にある省庁縦割り主義や年功序列など一体で見直す方針が示されたはずだ。 その改善が伴わなければ、天下り根絶は図れないだろう。

 その後も各省庁で天下り違反が相次ぐ。 議席数が多くても、官僚の身勝手を許す政権の指導性の欠如を示す。 「文科省はやり方が下手だった」。 今回の問題をそんな揶揄やゆに終わらせてはならない。





( 2017.02.21 )

  


 文科省の天下りあっせん問題は、組織が末期的状態に陥っていることを示唆している。 そして、こうした 「もの言えぬ」 組織は、民間企業にも散見される問題だ。

 文部科学省事務次官も関与した組織的な 「天下り」 のあっせんは、同省人事課がご丁寧にも文書作成するというトンデモな事態である。 同省に教育行政を仕切る資格はない。 しかし、そのこと以上に、この組織を解散しなければならない理由がある。


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 文部科学省の組織的な 「天下り」 のあっせんは、現行の国家公務員法に違反する、いわば違法行為であること自体、むろん問題であるが、文科省が組織ぐるみで、しかも人事課が首謀していたことが、事態の深刻さを示している。 文科省は国民教育の砦ではないのか、そして、人事課は組織における職員・社員のあるべき姿を示す、ロールモデルの役割を担う存在ではないのか。

 文科省は、 「法律を守らなければなりません」 と現場に指導しながら、自らは違法行為を行っているという事態だ。

 「李下に冠を正さず」 と現場には教育していながら、自らは 「規制に抵触するとは思わず、軽信していた」 と言い逃れをしているのだ。

 組織的関与を追求されて、( 天下りのあっせんは ) 「人助けのつもり。 まさにボランティア」 と、木で鼻をくくったようにかわし続けるなど言語道断国民を愚弄するなと言いたい自ら現場に指示・命令していることを、せせら笑いながら、それとは真逆なことを、自分たちはやりたい放題にやっていると思われるのは当然だ

 加えて、週2回勤務で年間1000万円の報酬を支払うということは明らかにおかしい。 誰もが気づいていたはずだ。 にもかかわらず同省人事課の面々は黙々と文書を作成し、プロセスを回してきた。 当たり前な倫理がすっぽり欠落しているのだ。 さらに、「天下り」 を受け入れた明治安田生命保険側は 「報酬は妥当な水準だ」 とコメント。 世の中全体の倫理観が麻痺している末期的な症状を呈している。




 実はこうした事態は文科省だけではなく、民間企業においても、よく見られる。

 「社員には経費節減を唱えながら、相変わらず経営者はグリーン車、ビジネスクラスで移動している」 「社員一人ひとりの働きがいの向上を掲げながら、役員は個室、部長は広めのブース、課長は角席、係長は4人掛け席に4人掛け、一般社員に至っては4人席に5人掛けを強いている」、 「現場の知恵を吸い上げることをスローガンに掲げながら、相変わらずトップダウン経営の能しかない」 … 自覚していないのは経営者だけで、社員はそのギャップにとうに気づき、もはや経営陣は信頼できないと諦観しているケースが少なくないのだ。

 やる側にやらせていることは、やらせる側もやらなければならない。 当たり前のことだ。 むしろ、やらせる側は、模範的にやらなければならない。 人事課もモデルを示さなければならない。

 経営陣が自らが率先して行う姿勢を示さない限り、社員全員にビジョンを共有することなど不可能なのだ。 戦略を実現できないと相談に来られる経営者は少なくないが、戦略が実現できないのは、実現するためのプロセスや仕組みや実現する側のスキルの問題もさることながら、経営者の姿勢がブレーキになっていることに気づいていないケースが実に多いのだ。

 経営者がそれに気づくにはどうすれば良いか。 経営者から依頼を受けて、組織開発のサポートをする際に必ず実施することは、社員一人ひとりからヒアリングをすることだ。 このように申し上げると、経営者の中には、 「社員の声は、社員満足度調査や、定期的な面談や飲み会で把握しているから問題ない」 というリアクションが必ずある。




 実は、経営者がそのようにリアクションするケースでは、経営者が社員の生の声を把握していないことがほとんどなのだ。

 いわば、経営者が 「無知の知」 に至っていない証だ。 仮に無記名であっても、社員満足度調査に本音を書くと信じているというのは、あまりにもナイーブだ。 ましてや役員との面談で本音を言うと思うか、組織に縛られた社員がたとえ無礼講の飲み会であっても経営者に耳障りな進言をすると思うか … いずれも否である。

 「マネジメントの遂行レベルを高めるために、社員の声が経営者に届いているかどうかが重要だ」 ―― この文脈で言う 「社員の声が経営者に届いているかどうか」 という問いは、経営者が社員の声を吸い上げているかどうかは関係ない。 他ならぬ社員が、 「自分たちの声が経営者に届いているという実感を持っているかどうか」 が重要なのだ。 社員自身が、社員の声が経営者に届いていると思えば届いているし、社員自身が、社員の声が経営者に届いていないと思えば届いていないのだ。

 今回の事件は、国家公務員法違反も、週2回で年間1000万円の報酬も、そして、教育行政を司る文科省で組織ぐるみで起きたことも問題だ。 しかし、それ以上に、実は多くの人間が気づいていたに違いない違法行為や不適切行為に、誰もアラームを発することがなかったという点が、最も深刻な問題であると思える。

 これほどのトンデモな行為に対して、誰も声を上げない( 上げられない )というのは、もはや組織として末期状態。 ここまでくると、組織を維持しながらの軌道修正は不可能だ。 衆議院予算委員会で、 「文科省を解散するほどの決意をもって出直しをしないといけない」 という委員発言があったが、文科省を解散せずして、信頼の回復は望めないと思う。






( 2017.02.21 )
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 文部科学省人事課が昨年、元外交官の男性( 64 )の東京外国語大学( 東京都府中市 )への再就職をあっせんした疑いがあることが、関係者への取材で分かった。 天下りを規制する国家公務員法は現役職員による職員、OBの再就職あっせんを禁じている。 文科省人事課が他省庁職員の再就職あっせんにも関与した疑いが浮上した。

 東京外大によると、元外交官の男性は中南米の大使などを歴任して昨年3月29日付で外務省を退職。 3日後の4月1日付で特任教授に就任。 留学生らを相手に国際交流に関する不定期の授業を受け持っている。

 大学は以前から国際交流専門の人材を求め、官民問わず各方面に適切な人材がいないか照会していた。 文科省人事課から昨年1月、男性を紹介されたという。 大学は外務省を通さず男性に連絡し、3月に面接をして採用を決めたという。

 東京外大は 「人材を探している中で当てはまる人の情報を入手して接触した。 天下りを受け入れたという認識はない」 としている。 文科省再就職等問題担当室は 「現在調査中」 としている。

 国家公務員法は、職員が他の職員やOBについて、営利企業などに情報提供することを禁じている。 内閣人事局によると他省庁の職員の再就職あっせんも禁じられている。 一方、再就職等監視委員会が国家公務員法違反の疑いがあると指摘した再就職28件中、文科省調査チームが20件前後を同法違反とみていることが関係者への取材でわかった。 関与した職員は十数人に上る。 文科省は21日にも中間報告を公表する。





( 2017.01.19 )
文科次官辞意


 「国民の批判は強い」 「やむを得ない」。 文部科学省の 「天下り」 あっせん問題で同省事務方トップの前川喜平事務次官( 62 )が辞任の意向を固め、省内に衝撃が広がった。 「他の省庁ではもっと大規模な天下りあっせんがあるのは霞が関では公然の秘密。 文科省だけで収束するとは思えない」。 他省庁への波及の可能性を指摘する声も出た。

 関係者によると、文科省では以前から、人事課の幹部職員らが中心になって、個室が与えられる各局の幹部職員らの天下りをあっせんしてきたという。 ある職員は 「実際にあっせんに関わるのはごく一部だが、前から続いている」 と明かした。

 2007年の改正国家公務員法成立で天下りの規制が強化されたこと自体は多くの職員が認識しているが、再就職については定年退職が近くならなければ意識することは少ないため、細かな規制の内容について知る職員は多くはないという。

 一方、この職員は 「他省庁ではもっと大規模に天下りが行われ、人事課の課長級以下の職員までかかわっている役所もあると聞く。 再就職等監視委員会に情報提供があって調査が始まったと考えられるが、 『なぜ文科省だけが責められるのか』 と多くの職員が感じているのではないか」 と省内の “本音” を代弁した。

 また、ある幹部職員は 「首相官邸としては次官の辞任で幕引きを図りたいのだろうが、他省庁でも天下りがあるのは霞が関の常識で、他の役所にも問題が発展する可能性がある。 その場合にも次官を辞めさせるのかどうか。 あしき先例になる恐れがある」 と話した。

最近の主な省庁トップの辞任・退任( ※組織名、肩書は当時 )
2011年8月: 原発シンポジウムの「やらせ問題」の責任を取り、経済産業省の松永和夫事務次官ら関連省庁トップ3人が辞任
10年12月: 元特捜検事の証拠改ざん事件後、大林宏検事総長が辞任
09年9月: 公務員制度改革を巡り政府・自民党と対立した谷公士人事院総裁が辞任
07年8月: 小池百合子防衛相と対立した守屋武昌事務次官が退任
02年1月: 牛海綿状脳症(BSE)問題を受け、農林水産省の熊沢英昭事務次官が辞任
02年1月: 小泉純一郎首相が国際会議でのNGO排除問題を巡り、外務省の野上義二事務次官を更迭
1999年11月: 茨城県東海村の臨界事故とH2ロケット打ち上げ失敗を受け、科学技術庁の岡崎俊雄事務次官が辞任
98年11月: 防衛庁調達実施本部の背任事件を巡る証拠隠滅疑惑を受け、秋山昌広事務次官が辞任
98年1月: 大蔵検査官の接待汚職事件を受け、大蔵省の小村武事務次官が辞任
96年11月: 社会福祉法人からの利益供与問題で厚生省の岡光序治事務次官が辞任




( 2017.02.21 )
【文科省天下り斡旋】

 調


 隠蔽マニュアルの引き継ぎ、大学審査情報の漏洩 …。 文部科学省の組織的天下り斡旋問題で21日、計17件に上る新たな違法行為が明らかになったが、公表された中間報告からは内閣府の再就職等監視委員会を欺くための組織ぐるみの隠蔽や、ずさんな情報管理の実態も浮き彫りになった。

合法を装う

 「基本的に嶋貫氏ではない誰かとする」
 今回の問題をめぐる調査では、文科省人事課OBの嶋貫和男氏( 67 )を調整役とする体制の引き継ぎメモの中で、監視委の調査を想定し、嶋貫氏の存在を表面化させないための 「隠蔽マニュアル」 も見つかった

 マニュアルでは、 「退職から2ヵ月以内に再就職した人は、監視委から詳細な報告を求められる」 と指摘。誰から再就職の声を掛けられたかを尋ねられた場合は、 「基本的に嶋貫氏ではない誰かとする」 とし、前任者や嶋貫氏への依頼者らの名前を回答するよう注意を促していた。

 3月に退職、5月に再就職した場合、合法的な手続きを装うため4月中に面談があったとするよう再就職者と調整しておくことも求めていた。

 平成27年3月ごろに作られたマニュアルには、実際に監視委から15人程度のヒアリング依頼があり、最終的には人事課が全員分の経緯を作成し、監視委の了解を得たとしている。


メール報告

 大学設置をめぐる不適切な事案も明らかになった。 嶋貫氏が22年1月に特別顧問として再就職した学校法人滋慶学園( 東京 )について、同学園のグループ法人が26年3月、嶋貫氏を学長予定者とする滋慶大学( 通信教育課程 )の新設を文科省の審議会に申請した。

 その際、審査過程で嶋貫氏が学識面などから学長資格を満たさない恐れがあるとの情報を、高等教育局担当の審議官らが部外の人事課職員に提供していたことが判明。 この職員は嶋貫氏に伝わることを期待して上司の人事課長にメールで同じ情報を報告したが、課長は嶋貫氏への伝達は不適切だと判断、連絡を控えた。

 学長資格をめぐる是正意見は同年5月、文科省から学園側に伝達され、その後申請も取り下げられた。

 松野博一文科相は 「審査の途中経過が担当外の職員に漏れることがあってはいけない」 と陳謝した。


有名大学も

 新たに判明した17件の違法行為には、有名大学が関係するケースも含まれていた。 上智大では27年、文科省から上智大に現役出向中の職員が同年度中に定年退職予定のため、同大理事が後任を探していることを知った人事課職員が、嶋貫氏と相談の上、候補者について話をした。

 筑波大では28年、前川喜平前事務次官が審議官当時、筑波大に現役出向中の職員から早期退職の了承を得て人事課長にメールで伝えるなどした際、前川氏と人事課長に再就職規制に違反する行為があったとしている。

 早稲田大をめぐっても、既に違法行為が認定されている吉田大輔・前高等教育局長とは別の同局長経験者について、人事課職員2人が26年4~5月ごろ、早大の非常勤講師だった元局長を常勤にするよう依頼したとしている。





( 2017.02.08 )
【文科省天下り斡旋】

 
   


 文部科学省の天下り斡旋問題で、7日に行われた衆院予算委員会の集中審議で参考人として出席した文科省の人事課OBの嶋貫しまぬき和男氏( 67 )が天下り先での厚遇ぶりを認め、波紋を呼んでいる。

 嶋貫氏はこの日、小川淳也議員( 民進 )から 「ドラフトされていた明治安田生命( 保険 )への顧問就任が実現しているが、実際に勤務形態は月2日勤務で報酬は( 年収 )1000万円だったのか」 と追及された。 これについて嶋貫氏は 「確かに社の方へ出向く回数は基本的にそうだった。 折に触れて行くこともあった」 などと出勤回数について述べると 「1000万円は」 という声が上がり、 「金額はその通りでございます」 と認めると国会内が 「おお~っ」 「信じられない」 という驚きの声に包まれた。

 これについてツイッター上でも 「俺にも天下り斡旋してよ~ 1000万の内1割くらいやるからさ~」 「ほかの省庁なども探せば、こんな例がもっと沢山出てくるはずだ」 「たくさんの礼金をもらっているでしょうから、脱税の調査はしてほしいわね」 などと厳しい批判が寄せられた。

 嶋貫氏は牧原秀樹氏( 自民 )の 「斡旋の中心人物と認定されているが、事実か」 との追及に 「許される範囲のものと考え、人助けという思いで行ってきたが、監視委員会の報告を受け、自身の認識不足を恥じている。 悔いてもいる」 と反省の弁を述べた。 これについてもツイッター上では 「民間の立場で人助けって、そんな道理はない。 だったらお金貰わず完全ボランティアでやりなさい」 などの批判の声が上がった。

 文科省が6日に発表した調査結果によると、嶋貫氏は人事課で調査官や企画官など要職を歴任し、2009年7月に文科省を退職。 保険代理店の顧問や財団法人の審議役に就く傍ら、人事課が作成した退職者リストを活用して再就職の斡旋に関与し13年ごろまでに嶋貫氏と人事課による斡旋体制が形成・拡充された。





( 2017.02.21 )

   


 文部科学省が21日に発表した再就職あっせん問題に関する調査の中間まとめでは、人事課OBの嶋貫和男氏( 67 )の仲介行為について、人事課職員がやりとりしていた引き継ぎ書類の詳細も明らかになった。 嶋貫氏の名前が表に出ないよう隠蔽を求める記述をしたり、政府の再就職等監視委員会の調査に対する虚偽回答の方法を記したりしていた。

 文科省の人事課が、嶋貫氏の仲介する再就職あっせんは違法だと認識しながら、事実上の業務として一連の行為を続けていた構図が改めて浮き彫りになった。

 文科省によると、省内の調査班が人事課職員のメールなどを調べたところ、人事課で 「任用計画官」 と呼ばれる複数の職員のメールから異動時の引き継ぎ書類が2種類見つかった。

 1つ目は、嶋貫氏が文科省を退職した1年後の2010年7月までに作成され、嶋貫氏を 「某氏」 と表現。 国立大学法人の理事・事務局長への再就職を例に挙げて 「某氏と相談しながら再就職先の案を確定」 「省内意見調整」 「調整の段取り案を作成し、某氏と相談」 ―― などと具体的な流れを説明していた。

 さらに15年3月ごろに作られた2つ目の書類には、再就職等監視委員会への対応マニュアルと取れる内容が並んだ。 退職後2ヵ月以内に再就職した職員については 「( 監視委から )詳細な状況報告を求められる」 ことや、 「最近、詳細に報告しないと本人および再就職先にヒアリングすると言われている」 といった記述があり、人事課側が監視委の対応を相当意識していた様子がうかがえる。

 嶋貫氏については 「嶋貫代表」 と表現し、 「( 再就職する職員に )誰から声がかかったかについては、基本的に代表ではない誰かとする」 などと記し、名前を出さないよう引き継いでいた。 監視委の調査に再就職者の面接時期を答える場合を念頭に 「適宜、再就職者と調整しておく必要有り」 などと口裏合わせもにおわせている。

 調査班は2つの書類や職員の対応から、人事課職員が 「定型化された作業」 として嶋貫氏と連携した違法な再就職のあっせんを続けており、職務専念義務違反に当たると指摘。文科省は当時の人事課長がこれらの書類の存在を認識していたかどうかは 「確認していない」 としている。 さらに調査が進めば、幹部も含めた隠蔽の実態が明らかになる可能性がある。





不正・事件・犯罪

  退



 組織のトップに立っていた人間が、知らなかったでは通らない。 文部科学省で、'09年頃から人事課OBを通じた組織ぐるみの再就職の斡旋が行われてきたことが発覚した。

 事務次官の前川喜平氏( 62歳、'79年旧文部省入省 )が引責辞任したが、退職手当5610万円は受け取るつもりだという。

 官僚の退職金は 「俸給月額」 をベースに算出される。 事務次官の俸給月額は、117万5000円。 これに 「勤続期間別支給率=43.413」 が乗じられ、さらに役職に応じた 「調整額」 が上乗せされる。 前川氏は局長や官房長を歴任してきており、それも加味されて5610万円もの高額退職金になったわけだ。

 前川氏はこれを受け取り、このまま逃げ切るつもりのようだ。

 官僚の再就職について、国家公務員法は省庁の斡旋や在職中の求職活動を禁じているところが、文科省はそんな法律などお構いなしに、組織的に官僚の天下り先を用意していた

 その仕組みを文科省関係者が明かす。
「人事課のOBが、文科省の退職予定者の求職情報と、学校法人や民間会社からの求人情報を人事課から入手し、そのOBが 『マッチング』 を行って、再就職先を斡旋していたのです。 これらは明らかな法律違反です」
 吉田大輔・前高等教育局長の早稲田大学教授への 「天下り」 斡旋も、こうした手口だった。

 さらに悪質なのは、文科省側はこうした行為の違法性を認識しており、内閣府の再就職等監視委員会の調査に備えて、吉田氏や早稲田大学側に対して虚偽の仮想問答を準備
 そこには、実際には同省の人事課が早稲田大学に働きかけたにもかかわらず、吉田氏が退職後、自発的に面接を受けて、採用に至ったと記されていた。

 なお、早稲田大学は吉田氏を年収1400万円で教授として迎えた。

 この問題を追及する民進党代議士で元経産官僚の後藤祐一氏が言う。
「より問題が大きいのは、吉田前局長です。 彼は文科省を定年退職したため、満額の5260万円をきっちり受け取っています。 その後、再就職が違法行為によるものだったことが認定されたのにもかかわらず、法的にこれを返還させる仕組みがないのです」
 世の中のサラリーマンのほとんどは定年後、会社に再就職先を斡旋してもらえることなどない。 仮に雇用延長をしたところで、現役時代に比べて大幅に安い給料になる。

 ところが、文科省では組織が斡旋してくれるばかりか、高待遇が用意されていたのである。
「時代は変わったのに、役人の世界が何も変わっていなかった」
 こう嘆くのは、天下り問題に詳しい千葉大学名誉教授の新藤宗幸氏だ。
「'07年に国家公務員法が改正され、天下りが原則禁止になりました。 その後、監視委員会も作り、各省庁の人事課が天下りを斡旋することは禁じられたことになっています。
 しかし、当時から 『あれはザル法。 見かけを整えただけで、抜け穴はいくらでもある』 と繰り返し指摘してきました。
 今回は人事課が直接天下りに関与していましたが、OBを使って外部に斡旋組織を作れば、法の目をくぐり抜けることは簡単です。
 天下りの問題は、官庁の許認可権限の影響力を受ける団体に、権限を行使する側の重要ポストにいた人間が就任することにあります。 今回は高等教育局長が、高等教育を行う早稲田大学に天下ったことが問題なのです。
 同時に、自分たちに有利な取り計らいを期待して受け入れた側にも責任があります」

返納するべき


 文科省の天下りは、氷山の一角にすぎない。 官公庁の役人が所管業界の法人に天下る例は枚挙にいとまがない。
「たとえば、タクシー業界の全国組織 『全国ハイヤー・タクシー連合会』 の理事は旧運輸省と警察官僚が常に天下っています。
 高市早苗総務相は、 『総務省に天下りの斡旋事例はない』 と言っていましたが、全国市長会や全国町村会の事務総長は総務省の局長以上の天下り指定席です。
 経産省の人間がたとえば電力会社に天下る場合は、すぐに役員になると問題なので、数年間は顧問として顧問料を支払い、ほとぼりが冷めたところで、役員として迎える。 この場合、顧問のポストは 『座布団』 という。 こうしたやり方がいくらでもあるのです」
( 新藤氏 )
 霞が関では、同期が組織のトップである事務次官に就任すると、その他の人間は退職することが慣例となっている。 60歳を前に、組織を追い出されることの不安は理解できなくもない。

 しかし、だからといって、退職後に民間の常識ではありえない高待遇でおいしい天下りをすることが許されるわけでもない。 しかも、破格の退職金を手にした上で、だ。

 文科省に長く勤めた寺脇研氏が言う。
「官庁は上下関係の秩序で成り立っているので、先輩が部下にいたら仕事がやりにくいという側面はあると思います。 ただ、それも慣れです。 民間企業では、年上の部下は普通のことになっています。
 霞が関は時代に合わなくなった人事制度を変えるべきでしょう。 天下り先を確保することに汲々とするのではなく、定年まで働ける環境や民間レベルの再雇用制度を整備することが先決です」
 不正の発覚した組織のトップが退職金を返納するくらい襟を正さないと、天下りの根絶は不可能だ。





( 2017.01.20 )

  
    



 文部科学省の吉田大輔・前高等教育局長が2015年、早稲田大学の教授( 任期付き )に再就職した際、省内の 「天下り」 あっせんを受けたとされる問題で、内閣府の再就職等監視委員会( 監視委 )が1月20日、文科省が国家公務員法に違反して組織的に天下りをあっせんしたとする調査結果を公表した。

 吉田前局長のケースのほかに9件で国家公務員法違反のあっせん行為などがあり、うち2件では、当時の文部科学審議官だった前川喜平・事務次官が直接関与していたと認定した。

 吉田前局長は2015年8月に文科省を退職後、同年10月に早大の 「大学総合研究センター」 の教授( 任期付き )に就任した。 しかし、監視委の調査では、吉田前局長が文科省在職中( 2015年7月 )に同省人事課を通じて履歴書を早大に送り、 「同省人事課が早大側と採用面談の日程を設定していた」 ことが判明。 監視委は 「国家公務員法が禁じる在職中の求職活動にあたる」 と認定した。

 毎日新聞によると、監視委が早大の人事担当者にヒアリング調査をすることを受けて、文科省人事課は早大側に 「別の文科省OBが再就職を仲介した」 などとする虚偽の想定問答を渡し、口裏合わせを依頼していたという。

 調査を受け、松野博一文科相は、前川次官を減給とするなど幹部ら7人の懲戒処分を発表。 すでに退職した吉田前局長は 「減給相当」 とし、当時の事務次官だった山中伸一・ブルガリア大使には給与の一部の自主返納を求める。 松野文科相も大臣俸給6ヵ月分を全額返納する。

 前川事務次官は20日付で依願退職した。


早大が会見、鎌田総長が見解を説明

 監視委の調査結果を受けて、早大の鎌田総長らが20日午後、東京・新宿区の同大学内で記者会見した。

 鎌田総長は元局長を教授として採用するに至った経緯について、 「高等教育行政に関する高い知見と研究業績があり、本学の教授にふさわしいと判断し、採用を決定した」 と述べた。

 その上で、文科省人事課から 「教員としての採用は再就職等規制に抵触しない」 「早稲田大学における正規の採用手続きが文科省退職後に開始されたものであれば問題ない」 という見解が示されたため、元局長の退職後に採用を進めたと説明。 違法性の認識はなかったとした。

 また、文科省人事課が早大側に口裏合わせを依頼したことについて、鎌田総長は 「( 早大の人事担当者は )文科省の依頼に基づき、同省作成の想定問答に沿って供述した」 と事実関係を認めた。 守田芳秋常務理事によると、文科省からは 「調査があるが、形式的な調査なので、想定問答に沿った回答をして欲しいと依頼があった」 ため、早大の人事担当者が 「文科省の意向に沿った回答をした」 という。

 一方で、鎌田総長は 「事の重大性に鑑み、2回目( のヒアリング )以降は積極的に事実を供述し、委員会の調査に真摯に協力した」 と釈明した。

 鎌田総長は 「再就職に関する本学の理解が不足していたことにより、文科省の違法なあっせん行為を止められなかったことについて反省しています」 「一時的とはいえ、調査を混乱させたことをおわびします」 と謝罪した。

 その上で鎌田総長は 「文科省との関係で不適切な利益供与・便宜許与を求めたこともなければ、これを受けたことも一切ない」 と、癒着について強く否定した。

 守田常務理事の会見での説明によると、早大が吉田前局長を採用した経緯は以下のとおり。
<2014年>
2月 早大が大学総合研究センターを設立
<2015年>
6月下旬 文科省人事課の職員2名が大学側に接触
※監視委は調査報告で 「文科省人事課職員が15年6月26日、早大側に文科省職員の受け入れを打診」 としているが、早稲田側は会見で 「そういう認識はなかった」 としており、説明が食い違っている。
7月13日 文科省人事課が、前局長に関する情報を早大人事課に提供
※大学側は 「研究センター設立当初から、教育行政に高い識見を持つ人材を探していた。 その中で、文科省から情報提供があった」 と説明。
7月下旬 文科省人事課が、吉田前局長の採用にあたっての面談スケジュールの調整を早大側に依頼
8月4日 吉田前局長が文科省を退職
8月6日 吉田前局長と早大人事担当者が面談。 その後、吉田前局長が早大側に 「教員任用履歴書」 を提出
※早大側は 「大学研究センターの説明や教育研究業績などが生かせるかなど、双方で懇談した」 とし、 「採用に関わる面談ではない。 あくまで懇談だった」 と主張。
9月24日 吉田前局長から提出された 「教員任用履歴書」 を元に採用について審議し、大学の法人会議で教授( 任期付き )として採用決定

吉田前局長、どんなことを教えていた?

 早大の研究者データベースによると、吉田前局長は2016年度に 「メディア専門研究セミナー」 「コンテンツの創作と利用に関する法律知識」 など著作権制度に関する講義を担当した。 著作権に関する著書もある。

 同大のホームページでは 「文部科学省等の各種事業関係に関する連絡調整等への関与( 大学への助言 )を行う」 と紹介されている。

 会見の中で鎌田総長は、吉田前局長が20日付で辞表を提出し、早大教授を辞職したと発表した。





 か!

 文部科学省が天下り斡旋あっせん問題の最終報告書をまとめ、不正に関わった歴代事務次官を含む43人の処分を発表した。

 組織ぐるみで法を無視してきた実態にはあきれる。 不正を生んだ土壌を含め、さらなる検証と再発防止を求めたい。

 平成20年施行の改正国家公務員法で、現職職員による再就職の斡旋や利害関係のある企業・団体への在職時の求職行為が規制された。

 文科省の天下り斡旋システムはこれを契機に導入され、22年から62件の違法行為が確認された。

 人事課OBを介して始まったことから、違法性はないとの認識が続いていた。 法令順守への意識の低さは深刻だ。 当時の人事課長が直接関与した違法行為も見つかった。 歴代3次官が停職相当とされるほど幹部の関与も大きい。

 ブルガリア大使に就いていた元次官が大使を辞職し、対外的にも信頼を失う事態である。

 改正法は一律に天下りを悪いというのではなく、官と民の癒着を疑われないよう透明性を持った再就職のルールを定めたものだ。

 官僚が 「裏口」 を設けてかいくぐるやり方は、国民の信頼を根底から損なう。

 大学などへの天下り斡旋が目立つ。 外務省OBの元大使の人事情報を提供するなど他省庁OBの再就職に関わった事案もあった。 個人の能力を生かすとしても、ルールを守るのは当たり前だ。

 大学など学校法人には国から多額の助成金が支払われ、文科省は学部新増設など多くの許認可権を持つ。 利害関係にあることへの緊張感が足りない。 大学側も、天下りを受け入れた場合のメリットを計算していなかったか。

 松野博一文科相は 「失われた信頼を取り戻し、新生文科省をつくり上げる取り組みを進める」 という。 同時に、文科省と大学の関係も問い直してもらいたい。

 政府は他の省庁の調査も進めている。 天下りはみんなやっている、という疑念を残さぬよう、徹底して行う必要がある。

 天下り規制強化と合わせた省庁縦割りや年功序列人事の見直しはどうなったか。 同期が次官に就くと、定年前の局長らが天下る慣行はなくなっていない。

 定年の延長も検討課題だろう。 適材適所で官僚の能力を生かす改革がなければ、天下り根絶は図れない。