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天下の“暴論”




 東京で生活していてなにが目障りかと言えば、大学生ほど目障りなものはない。
 電車の中では長い足を伸ばしてだらしなく座り、馬鹿面して漫画を読むかウォークマンをボリュームいっぱいにして聞いている。
 盛り場では派手な化粧の女子大生グループがたむろし、場所をわきまえず騒ぎまくる傍若無人の振る舞い。 高級料理店に行けば、カップルでぜいたくな物を食している。
 奴らの辞書に 「身分不相応」 という文字はない。 いや、正しい日本語がしゃべれないところを見ると、辞書さえ持っていないかも。
 江戸時代に 「所払い」 という刑があった。 これは江戸府内から追放することである。 それに習って大学生を所払いにしたらどうか。 都内の大学をすべて地方に移転させるのだ。
 近年、東京都下に移転する大学が増えたが、八王子や町田市では一時間ほどで都心に出てきてしまうから、移転させるなら東京から速く離れた東北、北海道の過疎地がいい。
 どうして西や南ではなく北国かというと、暖かい所では精神がたるんでしまうからだ。 酷寒の地で四年間過ごすことで辛抱を覚え、人間形成に役立つ。
 過疎地の農村なら地価が馬鹿安いから、アメリカの大学のような広大なキャンパスができる。 その中に校舎、図書館、学生と職員の寮、食堂、体育館を作る。
 過疎地に大学ができれば、これまでなにもなかった村が一躍学園村となり、自治体も村民たちも大喜びするに違いない。 少なくとも青森県の六ヶ所村のように、核廃棄物の処理場が誘致されるよりずっとましだ。 図書館くらいは村の予算で寄付してくれるだろう。
 寮生活が嫌だという学生は、農家に下宿するといい。 飯は食い放題だし、野菜は取れたてで新鮮。 早寝早起きが身に付き、健康になること請け合いだ。
 できたら食べ物の尊さを理解させるため、どの大学も一般教貨の必修科目に農作業を入れてほしい。 牧場で酪農の手伝いをしてもいいし、漁港に近ければ遠洋漁業でもけっこう。 夏休みのアルバイトは農作業と酪農と漁業以外はやってはいけない規則を作る。
 現在農村は人手不足である。 政府の農業対策がなってないため、農業だけでは生活できず、男たちは皆出稼ぎに行ってしまう。 それで昔から、母ちゃん、爺ちゃん、婆ちゃんの 「三ちゃん晨業」 などと君われる。 そこに東京がら来た大学生のあんちゃんとねえちゃんが加われば 「五ちゃん農業」 となり、日本の農業の未来は明るい。
 もちろん村にはディスコもなければカフェバーもない。 となれば、夜は勉強するか本を読むか、友達とおしゃべりするしかない。 そういう環境なら、現在の大学生の読書時間が漫画を含めて一日平均37分( 大学生協組合のアンケート調支 )などというような馬鹿なこともなくなり、少しは大学生らしくなるだろう。
 それに、テレビでたわごとをほざいているタレント教授連中も、過疎地に閉じ込めておけば世間に害を撒き散らさなくなる。
 農村にもうひとつ不足しているのはお嫁さんである。 嫁不足だから若い男性が村を捨て、大都巾に働きに行ってしまう。
 農村に女子大が移転したら、嫁不足が解消される可能性が出てくる。 女子大生たちが都会育ちの軟弱な男子学生よりも、農作業で鍛えた逞しい身体と純朴な心を持つ農家の青年のほうを好きになるかも知れないからだ。 聖心、白百合、学習院などのお嬢様と農家の青年のカップルが続出することを想像しただけでも、自分のことのようにうれしくなる。
 移転に伴い、学校名を変えなければならない大学も出てこよう。 たとえば青山学院大学のような都内の地名が付く学校である。 青学の場合、青森県内に移転して、青森学園大学にするのはどうか。 略せば青学のままだし、山と森、たいした違いはない。
 東京大学は岩手あたりに移して東北大学としたいところだが、同名の大学があるので、東北大岩手分校とする。 校名変更でちょっとは偏差値が下がるかも。  早稲田も地名だが、早稲田という字面と稲穂のマークが農村にピッタリなのでそのまま生かしたい。 移転先は米どころの秋田が最適か。 そして、慶応は山形、立教は宮城、明治は福島、法政は青森と散らばって、東京六大学は 「東北六大学」 と変わる。
 かくして都内の大学がすべて移転すると、かなりの面積の跡地が残る。 この跡地に、金が余っている東京都が低家賃の都営住宅を建設すれば、都民の住宅難は一挙に解決する。
 大学生が学問するのによい環境を与え、過疎地対策にもなり、農業問題と住宅問題まで解決する一石四鳥の大学移転策ではあるまいか。