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 高校教育の多様化や学力低下に対応し、大学の教育をスムーズにスタートさせるには高校と大学の教育内容の接続が必要だと言われている。 大学は入学者確保というねらいもあって高校と大学の連携が全国各地で進められている。 その実態と今後の進展を考えてみたい。




 高校の先生向けのフリーペーパーを眺めていたら、工業高校の校長の話に目がとまった。 工業高校の生徒の進学意欲が高まり、進学率は約24%だという。 そして、大学の工学部では理論や技術の修得だけでなく、技能を磨く分野も設け、スーパー技能者の育成コースを作ってくれ、と訴えている。 入試も工業高校の生徒に合ったものにし、高校での学習をそのまま大学につないでくれ、というのだ。 国立の技術科学大学が工業高等専門学校の生徒を受け入れているが、工業高校の生徒に合わせた技能コースを大学が作れば、同じような一貫教育の道ができることになる。

 さらに、その校長は大学における補習の問題にも触れ、次のように言う。
 「工業高校の先生には 『自分たちは卒業生に対して責任がある。 補習が必要なら自分たちが大学に出かけていって個別指導をしてもいい』 と考えている人が多い。 実際、都立の工業高校で、かなり以前から卒業生に 『分からないところがあったらいつでも来て勉強しなさい』 と呼びかけ、たくさんの卒業生が大学の授業が終わってから高校に来て教員に質問したり、勉強したりしている例がある」




 高大連携、高大接続の重要性が叫ばれ、さまざまな形での連携が進んでいる。 その一つのパターンが付属高校との連携だ。 昭和女子大学が文部省の指定を受けて以前から単位認定を含む試みを先行させているほか、各私立大学が入学者確保の一貫として付属高校との協力関係や交流を強めている。

 しかし、問題も多い。 受験生の急増期には付属高校からの進学枠を制限し、保護者から 「付属なのにどうして大学に進めないのか」 など不満の声が挙がった。 一方、大学側は 「付属からの入学者は学力が低い」 と敬遠ムードだった。 それが大学入試がやさしくなり、他の大学にも容易に進学できるようになってから手のひらを返したように 「付属の特典です」 と入学を薦めてもそう簡単にはいかないだろう。 特に、系列の大学であっても人気学部・学科への進学はいまでも難しかったりするし、本来の希望でない学部・学科にまわされて勉学の意欲がなくなり、中退してしまう不本意入学の問題もクローズアップされている。

 大学は付属高校の生徒に授業を行い、大学の単位を与えるなどの方策を模索しているが、高校・大学を貫くよほど魅力のある教育システムを示さないと親も子もそう簡単には動かないだろう。

 高大連携は私立大学と付属高校との間に留まらず、私立大学と公立高校、国立大学と公立高校などさまざまな組み合わせが出ている。

 北里大学は近隣の神奈川県立麻溝台高校との間で協定を結び、大学の先生が高校で授業をしたり、高校の先生が大学で補習授業をやるなどの協力体制を作った。 また、国立の鳥取大学と鳥取県教育委員会は、大学と県立高校の教員を互いに派遣し合う協定を結び、高校教員が鳥取大学で英語、数学、物理、化学、生物の5教科について5月から7月までに各15回、集中実施で補習授業を行っている。 また、大学の教員は県立高校の生徒に最新の研究成果を伝えて学習意欲をかき立てることをねらいとし、年間170時間程度、希望する高校で理数系科目を中心に講義をする。




 中教審答申は、高校と大学の連携を広げる具体策として 「大学教員が高校で講義したり、高校教員が大学の補習授業に協力する試みを進める」 としており、高大連携の動きは今後も広まりそうだ。 しかし、大学生の学力低下を防ぎ、高校生の進学意欲を高める方策が補習授業ということでいいのだろうか。

 学級崩壊やいじめ、犯罪などの現象は学級や学校という枠がもはや維持できなくなったことであり、文部省が言う 「生きる力」 や生活科、総合学習など教科を超えたカリキュラムは、体系的な学習はもはやできないという文部省の宣言( あるいは悲鳴 )なのではないだろうか。 授業も学級も学校も溶融化現象を引き起こしているのではないかと思う。 そして、その延長線上に大学生の学力低下があると考えると、とても補習授業で対応できるとは考えられない。 補習授業ではない新しい教育システムの構築が必要なのではないだろうか。

 大学に限らず、体系的な学習が崩壊したとなるとどうなるだろうか。 学問は進んでいるのに文部省が指導要領改訂の度に教育課程をスリム化してきたのは、教育現場で扱う項目・知識を少なくする代わりに探求する方法を身につけさせ、新しい課題にぶつかってもその方法論で対処していけるように、ということだったはずだ。 とすると、最初にテーマや目標を設定し、それに合った知識や技能を身につけながら問題を解決していくという従来とは逆コースの学習スタイルが求められる。 ケーススタディやプロジェクト方式、ディベート学習など最近流行の学習法がそれに含まれるが、今後この動きは大きな波になって進むだろう。

 学習方法だけでなく、前述したように学校という形式・場も溶融化しているのだから学習場所は学校だけということにはならない。 地域の自然や住民との触れあいの中で学習を進めることもあるだろうし、国内の遠隔地や海外である期間滞在するという形も出てくるだろう。 生徒・学生は毎日学校に来ることはない。 週に2、3日程度学校に来て学習活動を報告したり、学習相手を探したり、アドバイスを受けたりする。 いわば、学校は地域の学習センター( あるいは生涯学習センター )となる方向がいいように思う。

 それでは学習が体系的に行われないと心配する人がいるが、生徒・学生の学習テーマや内容の報告を受け、体系的な立場からそれを評価し、不足する知識や技能があると判断したらそれを補足するテーマや学習方法をアドバイスすればよい。 生涯学習審議会の答申にもあったが、学習履歴がわかる 「生涯学習手帳」 によってその人がどのようにバランスをとって学習したかがわかるようにすればよい。

 元に戻って、高大連携であるが、高校の先生は前述の工業高校の先生のように卒業生に対してどういう責任をとるか考え、大学における補習授業は 「なぜそれが大学で必要なのか」 を自分で確かめ、学生に確かめさせながら進めなければならないだろう。 めざすテーマがあったから学生は入学したはずだからである。 それがなければ学力の問題ではなく、進路変更の問題になる。

 高校の先生は自分の高校に帰って、生徒に 「何のために勉強するか」 を実感を持って教えることができるようになるだろう。 勉強したい分野と入学しようとしている大学・学部がミスマッチのときには自信を持って 「やめた方がいい」 と指導できるようになる。 それが高大連携であり、ある意味では高校と大学の溶融化現象である。 そういうことがあちらこちらで進み、だんだん地域が主導権を握ってきて小学校から大学まで溶融化するのではないか、と感じている。




 話は変わるが、最後に学生の授業評価について。 いま広がっているのは 「先生がどのように授業しているか( 声が大きいか、わかりやすいか、など )」 が中心である。 ( 株 )森上教育研究所は中学・高校の学級崩壊の現状を調査するために生徒が授業中にどのような態度をとっているかのアンケート調査を開発した。 これは生徒に直接聞くスタイルをとっている。 そこで、環境教育研究所ではこれを参考に大学版の授業アンケートを作成した。 次に示したのがその内容である。 これは、先生の授業を評価するのではなく、学生が学生の態度を評価するものであり、大学や先生の手を経ないで学生に直接アンケートを取りたいと考えている。 もし読者の中に身近にいる学生に呼びかけて調査に協力したいという方がいらっしゃったらぜひ調査結果を送っていただきたい。 授業評価は先生への評価と学生への評価の両面から考えてみたいのである。


<授業アンケート> [チェックシート]
               大学   学部    講義名 
受講している講義について、下記のそれそれであてはまるものに レ印をつけてください。
<授業について>
□ 授業中教室内を歩き回る者がいる。 (室内徘徊)
□ 授業に遅刻する者が多い。
□ 教員に無断で教室から外出する者がいる。
□ スケボーやローラースケートなどを持ったまま入室する。
□ 授業を開始しても着席していない者が多い。
□ 私語が著しい。
□ 授業中に携帯電話・ポケットベル・iメールの着信,送信を行っている。
□ 突然、奇声を発する者がいる。
□ 意味もなく爆笑したり.誰かの発言を復唱することがある。
□ 特定の言辞に対して、異常反応を示す雰囲気が醸成されている。
□ 教室内が騒然としているために教員の声が間こえない。
□ 当該科目以外の学習(いわゆる内職学習)をしている者が多い。
□ 教科書・ノートをまったく広げない者がかなりいる。
□ 授業中に学生間において文具の貸し借りが頻繁に行われている。
□ 授業中にマンガ本・雑誌を見ている。
□ 授業中に化粧をする者がいる。
□ 学生間で教室内での手紙の往復がある。
□ 教室内に物品が飛行する。 (紙飛行機,消しゴムなど)
□ 飲食行為が行われている。
□ 教室内で授業の進行に関係なくパフォーマンスを行う者がいる。
□ 帽子をかぶったまま授業を受ける者がいる。
□ 足を投げ出すなど、著しい着座姿勢の乱れがみられる。
□ 居眠りをしている者が多い。
□ 授業をマイナス方向に誘因する、いわばボス的存在の者がいる。
□ 代返をする者が多い。
□ パソコンや実験器具など複数の学生による共同作業のとき、少数の者に任せて参加していない者が多い。
□ 教員が質問を促しても質問する者がほとんどいない。
□ 教員の質問に対してきちんと答える者がいない。
□ 授業の準備( 予習 )をしてくる者がほとんどいない。
□ 教員が授業の準備( 予習・復習 )を促したり、指導することがない。
□ 著しい私語や飲食行為、携帯電話の使用などの状況に教員が適切な注意を発することができない。
□ 著しい私語や飲食行為、携帯電話の使用などの状況に対して学生間で、適切な注意をしあうことがない。
□ 授業のテーマがもともと学生の興味・関心に合わない。
□ 授業の進行の中で学生が授業内容に興味・関心を失っていったように思われる。
□ シラバス( 授業計画 )が提供されていない。
□ シラバス( 授業計画 )の内容と実際の授業の内容が大きくかけ離れている。
<試験・単位認定について>
□ 試験のとき、カンニングをする者がいる。
□ 出席しないと単位がもらえない。
□ 楽勝科目と言われている。
( 理由:                                 )
●自由記入欄 (その他何でもお気づきの点をお書き下さい。 )
※調査事務局からの問合せに応えてもいいという方は
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 (                              )
                    ご協カありがとうございました。