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大学に広がる授業中の 「メール私語」



 講義中、静かと思ったら ……、堂々 「メール私語」。 今や携帯電話は大学生ら若者に欠かすことのできないコミュニケーションの道具だ。 最近では電子メールの機能が付き、授業中に友人と私用のメールをやりとりする 「メール私語」 が教室内に広がり、本物の私語でやかましかった教室が一転、静かになっているという。 大学側はメールでカンニングができる恐れのある試験の時以外は、教室での携帯電話の使用禁止を強く打ち出すことはせず、教員の判断や学生らの自主性に任せているのが現状だ。

 授業中の私語を研究している甲南女子大文学部( 神戸市東灘区 )の島田博司・助教授は一昨年秋、授業中の話し声が減ったのを不審に思った。 ビデオを見るため照明を暗くしたところ、教室のあちこちに緑やオレンジの携帯電話の液晶画面が浮かび上がった。 「メールの内容は講義とは関係のないものがほとんど。 教室は静かになったが、学生の心は教室を抜け出している のと同じだ」 と見る。

 実態を調べようと、島田助教授は昨年6~7月、関西の7大学で学生915人にアンケートをした。 教室にメールができる携帯電話などを持ち込む学生のうち、54%が授業中にメールを 「よくする」 か 「時々する」 と答えた。 メール私語について、 「周りに迷惑をかけないから構わない」 と考えている学生は49%に上った。

 関西大総合情報学部( 大阪府高槻市 )の岡田朋之・助教授らがつくる 「移動体メディア研究会」 は、携帯電話やポケットベルによるコミュニケーションの調査研究をしている。 1999年春、関東と関西の4大学で学生590人に調査した結果、携帯電話を持つ割合は87%、このうちメール機能を利用している学生は76%に上った。 今では8割以上の学生がメール機能付きの携帯電話を持っていると推測する。

 神戸市内の大学に通う男子学生( 19 )は 「授業中に近くの席で話をされると、すごく気になる。 メールだと気がつかないことが多い」 、別の大学の女子学生( 19 )は 「相手が授業中でもアルバイト中でも、気にせずに送れるのがメールのいいところ」 と話す。

 大学側は休講の連絡や学生の呼び出し、就職情報の提供など、掲示板代わりに携帯電話のメール機能を積極的に活用し始めている。 一方で、教室での携帯電話使用をはっきり禁止するのは試験の時だけで、普段は個々の教員の対応に任せているという大学が多い。

 大阪産業大経営学部( 大阪府大東市 )の裴 富吉ベエ ブギル教授は、授業中の私語を厳しく禁止している。 携帯電話の電源も切るのが原則だ。 呼び出し音が鳴ると、学生が電源を切るまで授業を中断する。

 携帯電話でメールを送れば音をたてずに 「会話」 ができるが、裴教授は 「学生が 『他人の迷惑にならない』 と判断していても、実際はほかの学生に悪影響を与えている。 学生がこれを非常識だと思う 『常識』 を持っていないなら、教員が教えるしかない」 と話す。
( 『朝日新聞』 2001年1月6日 「大阪本社版」 朝刊記事 )